DNAの決定から離れた「超(スーパー)システム」

それ自身は何ものでもない単一の細胞から、実体を持った多様な細胞で構成される生命のシステムが現われてくる(中略)免疫における「自己」とか、発生における「個体」とか、まぎれもない生命の存在様式が形成されてゆくのだ。それを「無」から「有」を作り出す過程と言ったら言い過ぎかもしれないが、自分で自分を作り出す過程、すなわち自己生成の過程を見ることはできるだろう。
 私がこの本で点検しようとしている生命の存在様式、「超(スーパー)システム」は、まずこのようにして、あらゆる可能性を秘めた何ものでもないものから、完結したすべてを備えた存在を生成してゆくシステムである。その多くの部分は、遺伝情報を担うDNAの決定に頼っているが、そうでない部分もある。遺伝情報はばらばらに書き込まれており、その読みとり方、実行の仕方にはかなりの自由度と偶然が入り込む。生命システムの生成は偶然と確率を伴っている。そこに、DNAの決定から離れた、「超(スーパー)システム」としての生命の形が見えてくると私は考えている。(p.28、l.15-p.30、l.8)