言葉の成立と発展、遺伝子の誕生と進化には明らかに同じ原理が働いており、共通のルールが用いられているように思われる。一度単純な要素が創造されると、その組み合わせによって意味が生じ、繰り返しによって重複し、複製し伝達する際のエラーを取り込んで多様化してゆき、こうしてできた新しい要素の組み合わせは飛躍的に語彙の多様性を増やしてゆく。そのあとは、与えられた多様性を組織化して、複雑な生命活動を運営してゆくのである。
言語の成立過程にもゲノムの成立過程にも、別に目的があったわけではなく、また前もってブループリントが用意されていたわけでもない。それにもかかわらず、チョムスキーが指摘するように、いかなる言語も基本的には共通のルールに従って生成している。そのルールの方向づけも、言語が自分自身で作り出したのである。自分で作り出したルールに従って自己組織化し、発展してゆくのが超(スーパー)システムの本性なのである。(p.137、l.10-p.138、l.2)