細胞は、刺激があればそれにユニフォームに反応するといった単純な機械ではないのだ。それは、条件によって異なった行動の選択をする。ハムレットのように‘to be or not to be’と迷うばかりではなく、もっと多数のオプションの中から条件に応じてひとつの反応様式を選び出す。
生体は、こうした「場」と「時」に応じた細胞の選択が集積されて、はじめてうまく運営されている「複雑系」ととらえられなければならない。
生命は、DNAから細胞に至るまで、あいまいさに裏付けられて動いていた。実はそのあいまいさゆえに、生命は「回路」を外に開いて、動的に活動することができたのである。(p.210、l.15-p211、l.4)