あるインタビューで、ハーバード大学のヒューストン・C・スミスは以下のように尋ねました。つまり私が神経学と精神医学の教授として、人間は条件と決定因子に左右されるものだと認めるのかと。人間が生物学的、心理学的、もしくは社会学的な条件からまったく自由になれない極限状態のあることはよく承知していると私は神経学者および精神医学者として応えました。そしてさらに私は二つの領域の教授である他に、四つの収容所(つまり強制収容所)の生存者でもあり、そういう者として私は、人間が最悪の条件でも立ち向かい勇敢に振る舞い得たし、また常にそうであるという予想しがたい極限状態の証人であることを付け加えたのです。最悪の状態からでさえ距離を置くことができるのは、人間の独自の能力です。しかし、人間が直面するかもしれないいかなる状況からも自分自身を引き離すことのできる人間のこうした独自の能力は、強制収容所での事例のような勇敢さを通して明らかにされるだけでなく、ユーモアによっても示されるのです。ユーモアもまた人間独自の能力なのです。(中略)
ユーモアと勇敢さは、自己分離という独自の能力を表しています。この能力のおかげで、人間は状況からだけでなく、自身からも自分を分離することができるようになるのです。人間は自分自身に対する態度を選びとることが可能なのです。そのように振る舞うことによって、人間は自身の身体的および心理的条件と決定要因に、真の意味で立ち向かうことになるのです。このことが心理療法と精神医学、教育と宗教にとって極めて重要な問題となるということは理解できることなのです。なぜならこの観点からみるならば、人間は自由に自分固有の性格を形成することができ、そして自分自身から何をつくるのかということに責任があるのです。重要な事柄は、私たちの性格や衝動や本能それ自体ではなく、むしろそれらに対して私たちがとる態度なのです。そしてそのような態度をとる能力が、私たちを人間たらしめているのです。
身体的および心理的現象に対して立ち向かうということは、それらのレベルを超えて、新しい次元を開くことを意味します。ここで新しい次元とは精神的現象の次元であり、あるいは生物学的ならびに心理学的次元と対比する精神論的次元のことです。それは独自な人間現象が存在する次元なのです。(p.34、l.1-p.35、l.11)